新書は内容が気軽でかつ手軽に持ち運ぶことができることから、世代を問わず人気があります。では、数ある新書の出版社はそれぞれに特徴や違いはあるのでしょうか。
新書とは
新書とは、出版物の大きさを示すものです。出版社によってサイズが若干異なりますが、縦が173ミリメートル横が106ミリメートル前後の縦長です。単に出版物の大きさを表す際は、新書版またはB1サイズから40枚取れることから、B40判とも呼ばれます。
ビジネス書や実用書、専門分野の入門書などといったノンフィクションのものが多く、値段もおよそ1,000円以下と安価のため、手軽に雑誌感覚で持ち運ばれて読まれることが多い書籍です。
出版社ごとに特徴は違うのか
新書は、まず出版社によって装丁のデザインが異なります。出版社ごとにデザインが統一されていることが多いため、見慣れればどこの出版社のものかがすぐわかるようになります。イラストや写真などが全面に多用されて、華やかな雰囲気がある文庫本などと比べると、新書ではあまり用いられず、タイトルと著者名がはっきり書かれているシンプルなデザインが多くなっています。
また、出版社ごとに読者のターゲットを絞っていたり、内容に主旨を持っていたりする場合が多いため、それぞれに特色があります。
新書が扱う内容は、自己啓発やビジネス術など、実用的な内容を中心とした「実用新書」と、基礎的な教養や時事テーマを中心とした「教養新書」に大きく分けられます。そのどちらに重きを置いているか、もしくはその両方をまんべんなく扱っているかで出版社の特徴が出ますが、新参の出版社ほどこういった特色がはっきりと表れているようです。
新書の出版社にはどのようなところがあるのか
新書は、各出版社の新書レーベルから出されており、近年レーベル数が増えています。では、出版社ごとにどのような特徴があるのでしょうか。
幅広い分野を堅く扱う、新書の老舗「岩波新書」
岩波書店の「岩波新書」が創刊されたのは1938年で、日本国内で初めて新書を広めたといわれる、いわば新書の老舗です。教養新書が多く見受けられ、文理を問わず幅広いテーマを扱っていますが、特定の専門知識を得たい人に向いており、軽く読もうとする初心者にはあまり向いていないといわれています。
それは、初心者では分からないような専門用語が多用されているという点に起因するようですが、すでに知識をある程度持っている人には、とても濃い内容となるため、好んで手に取られています。
通勤時間に読めるような手軽さを主旨に、ベストセラーを生み出す「新潮新書」
新潮社の「新潮新書」は、創刊が2003年と、他社に比べてまだ歴史は浅いものの、読書をしない人でも耳にしたことがあるタイトルがいくつもあります。通勤時間や就寝前の一時などで手軽に読めるような、雑誌感覚の教養新書が多く出版されています。
また、ベストセラーとなった作品には、インタビューを元にしたものが多く見受けられます。他社と比べるとページ数が少ないため、手に取ると、薄いという印象を持つ人も多いようです。
タイトルに惹きつけられる「幻冬舎新書」
幻冬舎の「幻冬舎新書」は、2006年に創刊された、新潮新書よりもさらに歴史が浅いレーベルです。教養新書が多く、また、読者の読みやすさを重視しているといわれており、タイトルのつけられ方も、目に留まりやすい、または印象に残りやすいものが多く見受けられます。
読みやすい故に専門的な情報が少ないものの、幅広いテーマを扱っています。他社と比べると宇宙科学に関する作品が多いようです。
時事問題に切り込む「文春新書」
文芸誌の出版社としても歴史が深い、文藝春秋の「文春新書」は1998年に創刊されました。読者の対象を特に定めず、大衆に広く読みやすい教養新書が多く見受けられます。特に、時事問題や歴史問題をテーマにした作品がベストセラーになっているため、その傾向が強いとされているようです。
ビジネスマンに役立つテーマが多い「PHP新書」
PHP新書(ピーエイチピーしんしょ)は、PHP研究所が創設50年となった1996年に創刊されました。PHP研究所がビジネスマン向けの内容を扱っていたため、新書でもその傾向があり、実用と教養を兼ねる内容も多いようです。
ベストセラーとなった作品の多くが、自己啓発や生き方の思考方法など、ビジネスマンでなくとも役立つものが目立ちます。読者の対象とするビジネスマンを中心に、30代以降の世代に読まれる傾向があるようです。
お気に入りの新書があれば、その出版社は自分にとって相性が良いのかもしれません。多くの知識を得るには出版社を越えた読書も必要ですが、得たい知識が決まっていれば、出版社で選ぶというのも1つの手段でしょう。