芥川賞を受賞すると、正賞として懐中時計が、副賞として賞金が贈られます。
この賞金は課税対象で、一時所得として確定申告をする必要があります。詳しく見ていきましょう。
芥川賞の賞金はいくら?
芥川賞を受賞すると、正賞として懐中時計が、副賞としては100万円が贈られます。ただし、副賞の金額は年代によって変化していっています。
芥川賞が開催されたばかりの1935年は500円でしたし、近年も、第99回までは50万円でした。第100回目の節目となる1988年下期から100万円に変更されました。そのため、今後も時代の変化にあわせて賞金金額が変わることもありえるでしょう。
また、芥川賞を受賞すると、受賞作品が雑誌の「文藝春秋」に全文掲載されることになります。そのため、副賞の100万円の他に、「文藝春秋」へ掲載されることによって発生する原稿料も受賞者には支払われることになるといえるでしょう。
賞金に税金はかかるのか
芥川賞の賞金には、所得税がかかってきます。学術や芸術関係の奨励金は、非課税となる場合があります。そのため、権威ある文学賞である芥川賞も非課税になるのではないかと誤解されることも少なからずあります。確かに、芸術関係の奨励金は非課税になることが、所得税法により定められています。
学術若しくは芸術に関する顕著な貢献を表彰するものとして又は顕著な価値がある学術に関する研究を奨励するものとして国、地方公共団体又は財務大臣の指定する団体若しくは基金から交付される金品(給与その他対価の性質を有するものを除く。)で財務大臣の指定するもの
(所得税法第九条一項第十三号より引用 http://www.houko.com/00/01/S40/033.HTM#s1.3)
上記のように、学術や芸術の奨励金は非課税になると、確かに明記されています。しかし、芥川賞は芸術分野の奨励を目的とした賞ではありますが、芥川賞を主催する「日本文学振興会」は、財務大臣指定の団体には当てはまりません。そのため、賞金は課税対象となってしまうのです。
さて、所得税の所得区分は10種類あるのですが、芥川賞の賞金は、この内の「一時所得」に当てはまります。芥川賞の賞金は作家としての活動によってもらえるお金です。そのため「事業所得」に当てはまりそうなものですが、事業所得とは、「継続性・対価性」ないしは「付随収入」としての性質を有するものを指します。
芥川賞の受賞とは、予期せぬ臨時の偶発的な収入ですから、継続性は発生しません。ですから、一時的な収入である「一時所得」に当てはまるのです。つまり、一時所得の税率に従って、確定申告を行う必要があります。
おまけ:正賞である時計の秘密
芥川賞の受賞者には、正賞として懐中時計が贈られます。これは芥川賞ができた1935年から続く伝統です。記念に残る品物を正賞として与えたいという主催者の思いによって、懐中時計が贈られるようになりました。
芥川賞は芥川龍之介の業績を記念する意味もこめて創設された賞です。芥川龍之介は「懐中時計」をこよなく愛用し、いつも持ち歩いていたといわれています。その芥川龍之介の姿をしのぶ意味で、懐中時計が正賞として贈られるようになったのです。
戦前は、物資難から時計が準備できないこともあり、壺といった陶芸品が贈られることもありました。しかし、戦後、時計が用意できるようになると、改めて、受賞者に時計が贈呈されるようになったようです。
また、戦前は懐中時計が入手しにくく、時計屋と相談して、その都度選んでいたためブランドがバラバラでした。しかし、現在は「銀座和光」謹製のもので、裏側には「第○回芥川賞 贈 ○○君」と、受賞者名や何回目の芥川賞を受賞したかが刻印されています。
芥川賞の賞金について紹介しました。芥川賞を受賞すると、作家としての栄誉だけでなく、正賞の時計と賞金100万円が送られます。ただし、この賞金は所得税の課税対象となるため、一時所得として確定申告する必要があります。栄誉ある賞で得た賞金にも税金がかかると聞くと、なんだかちょっぴり切ない気持ちにもなりますね。