もしものときのために備える、終活。終活には遺言だけではなく「エンディングノート」「自分史」といった手段があります。こちらではエンディングノートと自分史の違いを説明しながら、どちらのほうが適しているのかをみていきます。
エンディングノートと自分史
エンディングノートと自分史は、どちらも自分のことを記すために必要なツールです。重なる部分が多いので、きちんと役割を把握しておきましょう。
エンディングノートの役割
医療や介護の希望、資産の分与、葬儀やお墓について書き記すのが、エンディングノートです。遺言のような法的な効力はありませんが、書いておくと細かな取り決めを整理できます。また、家族に個別で伝えたいことを記載しておく使い方も可能です。
自分史の役割
自分史とは、これまでの出来事や思い出を書きつづった記録です。単なる日記ではなく、「自分とはどんな人間なのか?」を誕生から今にいたるまで客観的に記したものです。自分が生きた証を残せるうえに、家族へのメッセージまで思う存分伝えられます。
エンディングノートを作るメリット
自分史とは異なり、エンディングノートは書店や文具店市販のものが置かれています。市販のエンディングノートは重要事項がもれなく記載されており、書き込めばよいだけの便利アイテムです。重要事項とは、葬儀や埋葬に関すること、遺産について、保険やサービスの契約一覧、大切な物の保管・処分方法などが挙げられます。
これらをきちんと書いてみると、次の5つのメリットが生まれます。
- 抜ける箇所なく、伝えたいことをまとめられる
- 家庭内の重要な連絡帳として役に立つ
- 何をどうすればよいのか、残された家族は困らずに対応できる
- 家族にメッセージを込めやすい
- いつ死ぬかわからない恐怖に怯えなくてすむ
事務的な内容までしっかり残しておくことは、死を受け入れる人の責任といえます。残された家族は、悲しみや混乱のなか取り急ぎ葬儀や埋葬、遺産分配を行わなければなりません。そのような状況で故人からのメッセージが何もないと、トラブルが多発してしまうでしょう。
逆にやるべきことをきちんと行っていれば、安心して家族に委ねられます。気持ちに余裕が出れば、家族一人ひとりにメッセージを伝えることもできるでしょう。また、自分自身の人生を振り返ると、現世との別れを恐れなくなっていくものです。
エンディングノートを兼ねた自分史の作り方
終活目的で自分史を書けば、自分の経験や教訓を整理できて、家族への思いをかたちに残せます。また、エンディングノートでは文章のみになりがちですが、自分史ならばフォーマットが自由なため、音声メッセージや写真、動画といったコンテンツとも組み合わせられます。デジタルカメラ、ビデオカメラ、音声レコーダー以外にも、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器を利用してみてもよいでしょう。
さらに自分史では時系列で表を作ってみるのがおすすめです。いつ、どんな出来事が起きて、どういったエピソードがあるのかをまとめてみてください。エピソードについても、箇条書きではなく、当時の思いを添えましょう。「高校の入学式では緊張していて周囲の様子を覚えていなかった。だけど、隣の席に座っていた○○さんとは今でも連絡を取り合っている」といったように、思い出せる範囲で書き出します。
そしてエンディングノートを兼ねた自分史を作るときには、家族とのつながりを意識しながら書いたほうがよいです。話題になった事件やニュース、当時の流行なども取り入れれば、笑いあり涙ありの素敵な自分史が完成します。
終活でエンディングノートを作るのか、それとも自分史を用意するのかは人それぞれ。どちらでも問題ありませんが、事務的な情報だけを伝えるのではなくメッセージや思い出を添えるようにしましょう。伝えるべき情報が多いのであればエンディングノート、家族へのメッセージを主体と考えるのであれば自分史を作るといった考え方でもよいでしょう。悔いの残らないように、自分の意思をかたちに残してみてください。