公務員が副業禁止というのはよく知られていることですが、公務員でも書籍を出版し、小説の賞を受賞した作家も存在しています。書籍の印税収入は当然副業になるはずですが、問題になっていないのはなぜでしょうか。
ここでは、公務員の副業禁止の理由や、どういった場合であれば副業が可能になるのかを詳しくご紹介します。
公務員が副業禁止の理由
一般の企業でも、就業規則で定められ、副業が禁止となっているところもありますが、公務員の場合は就業規則の替わりに法律で副業禁止が定められています。
主な理由は、国家公務員・地方公務員ともに「信用失墜行為の禁止」、「守秘義務」、「職務専念の義務」の3つです。
・信用失墜行為の禁止
国家公務員法第99条、地方公務員法第33条に記載されています。
社会的にイメージの良くない職業との副業によって、勤務先や本人の信用や品位をなくさないために定められています。
・守秘義務
国家公務員法第100条、地方公務員法第34条に記載されています。
公務員という職業上で得た秘密を、副業を通して外部に漏洩してしまうのを防ぐために定められています。
・職務専念の義務
国家公務員法第101条、地方公務員法第35条に記載されています。
副業による肉体的・精神的な疲労によって、本業である公務員の業務に支障が出てしまわないように定められています。
また、公務員は常に公平な立場でいなければいけないため、副業をすることによって、特定の会社や職業に利益が出る、あるいは利益を与えていると誤解されると大きな問題になってしまうことも副業禁止の理由の一つです。
任命権者の許可申請が降りれば副業も可能
前述の通り、公務員の副業は法律によって禁止されていますが、任命権者からの許可が下りれば副業することも可能となります。もちろんすべての業種で許可が下りるわけではありません。品位と信用を保ち、公務の秘密が漏洩しても特定の企業や団体の利益になりにくい業種で、本業が疎かにならないことが前提です。
ただし、この前提条件の中でも年間の所得が20万円に満たないものは副業とはみなされないので許可は必要ありません。
また、飲食店等でのアルバイトは店舗やサービスによっては品位を損なう可能性があり、多くの人が集まるため、情報が漏洩すると大きな問題になりかねないので許可が下りにくいようです。ただし、前提条件を満たす「家業の手伝い」や自らが管理しない「不動産賃貸」、「農業」は副業可能です。
小説や本の執筆で著しく品位を損ねるようなことは考えにくく、基本的に個人で行うものであるため特定の団体に利益が生じることはありません。肉体的な疲弊も少ないので本業が疎かになる心配も少なく、ほとんどの場合、許可は下りるでしょう。また、小説や本の印税だけでは大きな収入になるとは考えにくく、副業というより副収入とみなし、許可が必要ない場合もあります。
実際に公務員をしながら作家となり活躍した著名人
公務員として働きながら執筆活動をし、後に退職して作家となった著名人は意外と多く存在します。ここでは、そのうち代表的な方を例に挙げて紹介します。
俵万智
『サラダ記念日』で有名な俵万智さんは、神奈川県の県立高校に教師として勤めていました。
280万部のベストセラーとなった『サラダ記念日』を出版してから2年後、1989年に教師を辞め、その後歌集や小説、エッセイなどを発表し続けています。
立松和平
早稲田大学在学中に『自転車』で早稲田文学新人賞を受賞した立松和平さん。
卒業後多くの職業を経験したのち、宇都宮市役所に勤務し、『遠雷』で野間文芸新人賞を受賞しています。その後退職し、作家活動に専念して、多くの著書を残しています。
三崎亜記
久留米市役所の職員として勤務していた三崎亜記さんは、2004年、『となり町戦争』で小説すばる新人賞を受賞し、デビューしました。
2006年、『失われた町』を刊行後、公務員生活を終え、執筆に専念しています。
公務員が副業禁止の理由や、副業可能な業種や条件についてご紹介しました。ここでご紹介した以外にも、公務員をしながら作家として活動されていた著名人は数多く存在します。また、小説家や作家を目指している方が、ひとまずは生活の安定のために公務員を目指すことも多いようです。公務に差し支えないようにうまく時間を使って、執筆活動に励んで下さいね。